イロドリ便り

当事務所の弁護士&スタッフが、日常の由無し事を綴ります

取引

 今年1月にトランプ大統領が就任してから、世界が混乱しています。

 「deal(ディール)」という言葉を何度も耳にしました。「合意」と訳すこともできるようですが、使い方をみていると「取引」訳すのが適切で、ニュースでもそのように訳されています。

 この「deal(ディール)」という言葉は、本来、私には馴染みのある言葉のはずですが、トランプ大統領の発言は、大切とされていたはず(それが建前上であったとしても)の「法の支配」を崩壊させていると感じています。

 

 「取引」を「交渉」「駆け引き」と同義と考えるなら、私(弁護士)が日常的に行っていることも「取引」です。利益の対立する相手と、お互いの論拠に基づく言い分をぶつけ、条件を提示し、折り合える点を探ります。「取引」において、強い立場が弱い立場を圧倒するような内容の合意を迫ることがあります。

 しかし、トランプ大統領が行う「取引」とは決定的に違う点があります。それは私たちの「取引」は、法律の定めのもとで行うことです。立場の強弱は、経済力や物理的な力の強弱ではなく、法律を当てはめたときにどちらの立場に正当性が認められるのか、ということで決まります。それゆえ、一市民が、大企業との交渉で、有利な内容の合意を勝ち取ることもできますし、国に勝訴することもできます。

 

 国と国との間の権利義務を規定する法律も機関もない(様々な国際機関はありますが、強制力をもって主権国家が従うような機関がないという意味です)国際関係においてトランプ大統領が使う「取引」は、結局は、「経済力や物理的な力の強い国が、弱い国に対し、不利益を被りたくなければ言うことを聞け」というむき出しの暴力にすぎません。

 「法の支配」を尊重しなければ、国際社会で損失を被る(結果、自国民が損失を被る)というような状況があれば、「法の支配」を尊重することが「取引」に有効となるはずです。商品券を配ってもよいので、日本の首相には、そうした状況を作ることに指導力を発揮してほしいです。

もう春です。取引など無縁に生きているハルの平穏な日々が続きますように。

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