認識と記憶
10月になってから、新型コロナウイルスの感染者数の減少が続いています。
10月25日には、大阪でも飲食店に対する時短要請も解除されて、人出も大幅に増えて、コロナ前に戻るくらいの勢いです。
緊急事態中、人見知りの愛犬ハルは、ステイホームで人が少なくて伸び伸びと散歩できていましたが、そうはいかなくなりました。
コロナ禍の間に、カミュの「ペスト」を読みました。「不条理」を描いた作品で、コロナ禍ではたくさんの方が読まれたそうです。
主人公のリウーは、ペストと戦う唯一の方法は「誠実さ」であり、「誠実さ」とは「自分の職務を果たすこと」と述べていました。
コロナの感染拡大が酷かったときは、電車に乗ったりすることだけでも怖さを感じていたのに、そういう状況かでも医療従事者の方は誠実に業務に就いて、命と健康を守るべく戦っていました。他方で、「誠実さ」を売りにしている政治家の説明をしようとしない姿勢、責任を回避しようとする態度も、連日のように目にしました。
ペストの最後、感染拡大がおさまり市民が歓喜する中、主人公リウーは、ペストとの勝負で勝ち得たものは「認識と記憶だった」と述べます。
不条理な世界に放り出された人ができることは、不条理な出来事があっても、それを認識し記憶して忘れないようにすることなのだと思いました。電車に乗るのにも、外で飲食するのにも危機感が薄れつつあるこの頃ですが、忘れてはいけないことはしっかり記憶して、日々の自分のできることを果たすことが大切だと思います。
晴れでも、雨でも、緊急事態中でも、そうでなくても、毎日ちゃんと散歩するハルのように。
第6波がないこと切に願います。