高校への出張授業派遣の感想と求人詐欺について
先日、大阪弁護士会の要請により、大阪府立鳳高等学校の生徒に対して、労働法の授業をしてきました。その時の感想をお話します。
私の担当は、高校3年生のクラスでした。クラスの生徒は、全員進学するとのことでしたが、大学を卒業した後は、大多数の人が企業に勤めることになるので、その時に少しでも役に立てばという思いで授業に臨みました。
授業の準備段階では、50分の授業時間内に、どれだけの内容の話ができるのか、生徒が興味を持って聞いてくれるか、いろいろ悩んで資料を作りました。
授業当初のつかみとしては、私の出身が堺市であることや(鳳高校は堺市西区)、だんじり祭(大阪の南の方ではメジャー?)に参加していることを話す等して、何となく親しみやすさを感じてもらえたと思います。
具体的な授業の中身としては、労働問題のうち、企業へ入社する場合に、法律上、注意しなければならない点について話をしました。
例えば、企業との雇用契約が成立するタイミングは、内定の時点と考えられることから、ネット広告やハローワーク等で掲載されている雇用条件と、その後の最終面接の時点や内定時点で示された雇用条件に差異がある場合には、後者の条件で雇用契約が成立してしまいます。
したがって、ネット広告等に載っている雇用条件だけではなく、その後の内定時点での雇用条件にも注意していなければなりません。雇用契約書等の書面で確認がベストです。
生徒には、法的な問題に対して多数決を取ってみたり、持参した六法全書の条文を朗読してもらったり、出来るだけ飽きさせず、自分たちの身近な問題だと感じてもらえるように話をしました。
私の話に対して、バイト経験のある生徒は、想像ができている様な顔をして話を聞いていました。ほかの生徒に対しても、近い将来に経験するだろう就職活動や面接の際の場面を想像してもらいながら、話を聞いてもらいました。
授業では、大阪府のHPでダウンロードできる「働くルールBOOK」というものを参考資料として使用しました。簡単に読めるリーフレットなので、皆さんもどこかの機会に読んでみてはいかがでしょうか。
授業中は、居眠りする生徒もおらず(1人は怪しかったですが)、真面目に聞いてくれていたと思います(願望かもしれませんが)!
以上のような問題について、昨今では「求人詐欺」という言葉をよく聞きます。
実際には、募集時点での条件を不明確に定め、後の最終面接や内定時点で「実は残業代も全て込みの給与額だ」等と言われ、そのまま入社してしまうということが多いようです。断り切れず入社してしまう要因として、日本では「新卒」というものが一種のブランド視されていることも影響があるように思います。
しかし、会社に入社した後で、「募集時点での雇用条件に戻せ!」等という主張を、裁判で認めさせることはとても困難です(悪質な会社には、事後的に損害賠償請求が認められる場合があります)。
それゆえ、雇用契約を締結する際には、最終的に示された雇用条件を契約書等でしっかりと確認して、募集時点での条件と違う場合には、ちゃんと指摘したうえで修正を求めましょう。
修正を拒むような会社であれば、求人詐欺以外にも長時間労働を強いる等、他の問題を抱えていることもありえますので、入社自体を考え直してみるべきかもしれません。
とにかく、求人詐欺の被害に遭った場合には、ご自身で抱え込むのではなく、専門家に相談するようにしてください。
弁護士 西川