イロドリ便り

当事務所の弁護士&スタッフが、日常の由無し事を綴ります

捜査機関の証拠について

今回は久々に真面目な話をします。

私は、それなりに(平均的な弁護士よりは多いです。)刑事弁護も行っています。
実は、昨年終盤から、今年にかけて、「裁判員裁判対象事件」が4件連続で正式起訴がなされずに終了する、という記録が続いています。

この記録、簡単に記しますと、
①殺人未遂 →殺意の嫌疑不十分または正当(過剰)防衛、不起訴で終了
②強盗致傷 →嫌疑不十分、処分保留で釈放→不起訴で終了
③殺人未遂 →殺意の嫌疑不十分、略式罰金で終了
④(事後)強盗致傷 →嫌疑不十分、不起訴で終了
といった感じです。
(その間に弁護していた薬物の案件は起訴されていますが、それは横に置いておきます。)

4件とも起訴されていないことの自慢がしたいわけでないです(ちょっとありますが)。
このうち、①と④は防犯カメラに犯行の一部が映っていたようです。
今回は、捜査機関が押さえている防犯カメラについて話します。

皆さんがご存知かどうかは分かりませんが、そもそも、捜査段階(起訴される前の段階)では、逮捕された被疑者も、弁護人も、捜査機関(警察とか検察とか)が持っている証拠は、まったく見ることができません。
取調べの際に捜査官が意図的に見せたりすることもありますが、こっちから「見せてほしい」とお願いしても「捜査に関する機密情報だからムリ」と言われます。
ですから、弁護人は、全く情報がない状況で、被疑者の話を聞いて、調べて出てくるほんの少しの情報を基にして弁護活動をしないといけません。これが中々難しいのです。
実は、①の件は、ネット上に防犯カメラ映像が拡散されていました(ニュースになったので)。たまたま検索でヒットしたので、私も見ることが出来ました。そして、明らかに被害者が危険な行為に出ているのが、一見してわかりました。
他方、④も防犯カメラがあったらしいですが、最後まで見ることはできませんでした。この場合、弁護人としては「こんな感じの防犯カメラの映像に違いない!」と、想像で主張を組み立てます。結果、今回は想像が当たっていたようで、不起訴になりました。
しかし、防犯カメラを事前見ることが出来たら、もっと簡単に主張が出来るはずなのです。もっと充実した弁護活動ができるはずです。
そもそも、防犯カメラの映像って、弁護人が見たところで、それ以上証拠を隠すことなんてできませんよね(そりゃ弁護人が偽造とかしたら別ですが・・・)。防犯カメラのような客観的な証拠は、見せても、特に弊害はないはずなんです。場合によっては、それで被疑者の犯行が明らかになったりしますから、弁護人が無茶な主張をしている被疑者を説得することだって不可能ではありません(味方の立場である弁護人が説得するなら、被疑者も納得してくれやすいのです。)。捜査機関にとってもメリットの方が大きいと思いませんか?
捜査機関には、是非、客観的な証拠を積極的に開示してもらいたいものです。

ちなみに、今、別の裁判員裁判対象事件の弁護の真っ最中です。
はてさて、これは起訴されずに終わるかどうか・・・
機会があれば尋ねてみてください☆

弁護士 野澤

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